2019年2月8日金曜日

15.こうしゅう田わ

≪1994年春≫


耕平、1年生。
今日は、「田」という字を習ってきた。
田には、「た」と「デン」という読みがある。
「デン」を使った熟語を書けという問題。
持って帰ってきたワークブックを見ると、彼が書いたのは「こうしゅう田わ」。
そこに、担任教師が大きく×をつけた。

「耕ちゃん、でんわは『田わ』じゃないんだよ。
「そうなの?」
「でんわは、『電話』って書くの。」
「ふ~ん、むずかしい。」

耕平の世界にある「デン」の音がつく言葉は、まず「電車」だ。
それから、電気、電話、電線、電信柱、電池、懐中電灯。みんな「電」だねえ。
でも、「電」の字は難しいので、1年生ではまだ習わないらしい。

子どもの世界で、「デン」という音で「田」という字を使っている言葉はあるんだろうか?
で、辞書で調べてみる。
田園、田楽、田地・・・
いや~、こんなの1ねんせいのこにわかんないでしょ。
水田、塩田、油田、炭田・・・
これも身近にないし、思いつくわけない。無理。

「耕ちゃん、これは問題が悪い。できなくてもいいわ。」

2019年1月12日土曜日

14.僕ってそういう人なの

 届いた荷物の中身を取り出した後、夫が荷物をくるんであったプチプチをつぶし始めた。
 プチプチとは、梱包材として使われている、前面に丸い気泡がびっしりと並んだポリエチレンシートのこと。正式には気泡緩衝材というそうだ。

 「僕好きなんだよね、これつぶすの。ストレス解消になるんだ」と夫。
 「へえ~、そんなにストレスたまってるようには見えないけどね」と軽口をたたいているところに、子どもたちがやってきた。
 「あ~、面白そう! やらせて、やらせて~」とかおる。小学2年生。
 「耕平もやる? 面白いよ」と夫が誘う。
 耕平はにべもなく言う。「僕はしないの」そしてつけ加えた。
 「僕ってそういう人なの」
 「・・・・・・・・・」呆然とする夫。

 「僕ってそういう人なの」
 これは、自分のことを外側から見た表現。自己を客観視していることを示す言葉である。いわゆるメタ認知。
 保育園に通っている息子に、「自分はそういうプチプチをつぶしてはしゃぐというような人間ではない」という意味合いで言われて、子どもじみた行動をしていた父親は言葉も出ない。
 子どものメタ認知能力の発見。衝撃的な出来事だった。

 2歳上の娘の場合は、こうした変化がいつごろあったのか、うかうかしていて気がつかなかった。
 メタ認知―自己を客観視するという行動、私自身がいつごろからそういうことができるようになったかということもよく覚えていないが、親が考えるよりずっと早くこどもはできるようになるということだ。
 耕平、5歳5ヵ月。保育園年長組。
 子どもの成長恐るべし!